お知らせ

第8回 全広連秋のシンポジウム(11月10日、新潟日報メディアシップ)


「広告は人を動かす力」

~最前線で活躍中のトップ・クリエーターによるトークセッション2015~

 

恒例の秋のセミナーを、今年は全日本広告連盟との共催で開催しました。第一線で活躍するクリエーターがそろうとあって会場は満員、終了後は「大いに刺激になった」との声が多数聞かれました。

協賛/公益財団法人吉田秀雄記念事業財団、後援/4大学メディアキャンパス(長岡造形大学・新潟青陵大学・新潟薬科大学・新潟青陵大学短期大学部メディアキャンパス)、公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会新潟地区、新潟アートディレクターズクラブ。


鏡 明氏
鏡 明氏

《第一部》


●基調講演

「世界の潮流から、次のクリエイティブを考える」

講師 株式会社ドリル 
 エグゼクティブ・アドバイザー 鏡 明氏


一般社団法人 全日本シーエム放送連盟 国際委員会委員長1948年山形県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、1971年電通入社。2012年3月電通 顧問退任後、現職。ACC賞、カンヌ、アドフェストをはじめとする国内外の広告賞で受賞多数、また審査員を務める。2002年、アジア最大の広告賞アドフェストでアジア人初の審査委員長を務め、2009年カンヌ国際広告祭では東アジア初の審査委員長に就任。

主な作品は、東京海上火災「損害保険シリーズ」、パナソニック「ルーカスの仲間たち」他「マックロード」「ナショナルのあかり」、WOWOW「走る女」「BIRD MAN」等。大学在学中には「SFマガジン」で翻訳家デビュー、その後SF小説家、書評家としてもデビューし、作品に「不確定世界の探偵物語」、訳書に「蜃気楼の戦士」など多数。現在「本の雑誌」で『連続的SF話』を連載中。第33回(平成26年)「東京広告協会 白川忍賞」受賞。

広告はこの1~2年で、いくつか変化しています。一番は、企業活動をサポートするという本来の機能に戻り、広告の社会的存在というものが当たり前になりました。もう一つはインターネットによって、グローバルと個人の差がなくなってきました。そして、今までは広告の仕掛けが注目される傾向でしたが、人を引きつける内容、中身そのものが大事になっています。さらに広告の作り手側にとっては、さまざまな形のメディアから選択の自由があるということ。ウェブなどデジタル系のテクノロジーが、内容そのものに深く関わるようになってきたということがあります。

先ほど、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのグランプリ作品を見ていただき、「いつでも、どこからでも、誰でも、世界を動かすことができる」ということがお分かりになったと思います。これは我々クリエーターにとって、競争相手が世界中にいるということです。それと同時に、言語、経済、宗教、国家、人種、文化などの顕在してきた壁を、広告がどうやって乗り越えることができるかが問題になってきます。

広告の力で企業活動をサポートし、世の中を少しは良くする、そして人を動かすことで世界は動いていきます。そうすることで地域を元気にしたり、皆さん一人一人を活性化することにつながるのではないでしょうか。



佐藤 カズ―氏
佐藤 カズ―氏

●プレゼンテーション

「人を動かす新しい広告たち」

講師 株式会社TBWA\HAKUHODO 
 エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター 佐藤 カズ―氏


1973年横浜生まれ。97年Sony Music Entertainment入社。Leo Burnett経て2010年TBWA\HAKUHODO入社。メディアの枠を超えたBig Ideaで、カンヌ金賞、クリオ金賞、ONE SHOW金賞、SPIKES金賞、ADFEST金賞、ACC金賞、ADC賞、文化庁メディア芸術祭など、200以上の国内外の賞を受賞。また数多くの国際賞の審査員をつとめる。代表作に「SUNTORY : 3D on the Rocks」「United Arrows:恋するレーベル、Marrionettebot」「QUIKSILVER:TRUE WETSUITS」「FRISK:HELP ME, FRISKシリーズ」「adidas:SKY COMIC, Highest Goal」など。11年クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト。12年カンヌ国際広告祭 フィルム部門審査員。13年Campaign Asia クリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞。趣味は広告のパトロール。

いまは4大メディアを使って広告を動かせばいいという時代ではなく、新しい伝え方を見つけて新しい広告を作っていかなくてはいけません。私の仕事のキーワードは「イノベーション」です。イノベ―ティブな仕事、作品、ブランドを企業に提供することを目標としています。私のこの1、2年の仕事からご紹介したいと思います。

〈TRUEウエットスーツ/クイックシルバー〉

プロダクトイノベーション……実際にブランドとビジネススーツ兼用ウエットスーツを作り、広告的な役割を持ちつつサーフビジネスを活性化させることになりました。商品開発からアプローチするという新しい広告です。

〈3Dオンザロックスキャンペーン/サントリー〉

デジタルイノベーション……3D彫刻でさまざまな形のオン・ザ・ロックを作り、新しい飲み方の提案をしました。クリエーティブの仕事は考えるだけでなく、作るということが世界的に求められています。デジタルにより、新事業も可能です。

〈GIGA selfie/オーストラリア政府観光局〉

サービスイノベーション……スマートフォンの カメラ遠隔操作で観光地にいる自分と周囲の景色を撮影してくれる自撮りサービスを提案。アイデアを超えて発明という視点が成功を導きます。

〈NISSAN GT‐R/日産〉

ソーシャルイノベーション……リアルタイムで情報を入手し、有名DJが車をNyan Cat仕様にしたことで批判を浴びている40分以内に、「NISSAN GT‐Rならご自由に」とNyan Cat仕様に合成して送信。プロアクティブが重要です。

〈新しい採用実技試験/倉敷中央病院〉

雇用イノベーション……時間内に5ミリ四方の紙で鶴を折る・ばらばらの昆虫を組み立てる・1ミリの米で寿司をつくるという実技試験を提案しました。ローカルからも世界に発信する話題作りができます。

「変わらないために変わり続ける」というニール・ヤングの言葉があります。広告業界がかっこよくて憧れられる存在であるために、自分自身も変化していかなくてはならないと思っています。



澤本 嘉光氏
澤本 嘉光氏

「ところで広告は最近どうなっているのか」

講師 株式会社 電通 CDC
 エグゼクティブ・クリエーティブディレクター/CMプランナー 澤本嘉光氏


1966年、長崎市生まれ。1990年、東京大学文学部国文科卒業、電通に入社。ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、TOYOTA「ドラえもん」、家庭教師のトライなど、次々と話題のテレビCMを制作している。著書に小説「おとうさんは同級生」、小説「犬と私の10の約束」(ペンネーム=サイトウアカリ)。後者は映画脚本も担当。映画「ジャッジ!」の脚本も担当し昨年一月に公開。クリエイター・オブ・ザ・イヤーを最多3度授賞、カンヌ国際広告祭、ADFEST(アジア太平洋広告祭)グランプリ、クリオ賞金賞、TCC賞グランプリ、ACCグランプリなど国内外の受賞多数。2014年ACC賞ラジオ部門審査委員長。

〈ホワイト家族/ソフトバンクモバイル〉

広告は、さまざまな制約がある中で作られます。白い犬がソフトバンクの象徴になったことで9年間続いているシリーズですが、白い犬を使うことも制約の一つです。さまざまなアイディアで課題を解決しています。

〈野球・ソフトボールを東京オリンピックの正式種目に!キャッチボールプロジェクト〉

キャッチボールをつないでいく動画を考え、著名なプロ野球OBや芸能人にも無償で出ていただき、話題を呼びました。テレビの情報発信でネット上の長い動画へ誘導しました。

〈東京国際映画祭30周年記念キャンペーン〉

「すべての映画はこれより面白い」という言葉が入ったCMを一般公募しました。スマートフォンで気軽に動画が撮れてレベルが上がっていますので、今後も有効だと思います。

〈家族の絆/東京ガス〉

ストーリーを十分に伝えられる90秒CMを週に1回流しています。リクルーティング効果も上がっています。15秒CMと長いCMを目的により使い分けていくことも必要です。

〈クラウン/TOYOTA〉

若い層の注目をねらい、車の色と使用する音楽を変え、イメージを変えることに成功しました。

〈ドラえもん/TOYOTA〉

「T子」「ジャイ子」を頻発するCMです。せりふの重要性について改めて考えさせられました。



トークセッション

《第二部》


●トークセッション

鏡明氏をモデレーターに、佐藤カズー氏、澤本嘉光氏によるトークセッションが、参加者からの質問に答えながら行われました。


Q 新聞などの紙媒体のこれからについて

佐藤:広告には二次的波及力が求められています。ハッシュタグを付けてツイッタートレードされるなど仕掛けが必要ですし, 媒体自体が新しいことを積極的にやって価値を上げていくべきだと思います。

澤本:新聞広告は読者に見てもらうだけでなく、会話のツールになることを想定して、掲載の時期や内容を考えることが大事です。

佐藤:いい仕事は、ラインやメッセンジャーで話していることから生まれることも多い。SNSがクライアントとの距離を近くしてくれました。

Q 商品の中身を伝える広告のあり方について

佐藤:説得をしようとしてもソーシャル上の人は動きません。ブランド価値をつくる広告を打つことで、その他の情報に辿りつかせたいというクライアントが多い。スペックなどはユーザーの目に触れるように設計しつつ、入口はそういう仕掛けが求められます。

澤本:人は気になっていたら調べます。何かを気にさせることまでが現状の広告の役割だと思っています。

Q 発想のためのインプットは?

澤本:世の中の広告の流れに遅れないようにはしたいので、新しいものを見たりはします。

佐藤:アイディアは記憶の積み重ねの掛け算。音楽やせりふで気になるものは調べ、ヤフーニュースやツイッターなどで、世の中での話題、トピックランキングなどをよく見ます。

Q 最後にメッセージを。

澤本:広告はどんどん姿を変えていますが、制作のベーシックの部分を疎かにしないようにしないといけないと思います。

佐藤:動画は便利な道具で、You Tube一つで一瞬にして世界に発信できる。地域から積極的に世界に発信してほしいし、ローカルだからこそできる自由度を見てみたいです。

:クリエーターと広告主、媒体が一緒に何かをすることで新しいものが生まれます。広告の力で新潟を元気にしてください。