お知らせ

情報デー/時の話題講演会

浅葉克己氏

浅葉克己氏

●タイトル

情報デー/時の話題講演会

講演「デザインは爆発だ」

●講師

東京TDC理事長・桑沢デザイン研究所所長 浅葉 克己氏

●講師プロフィール

講師 浅葉 克己氏

一九四〇年、神奈川県横浜市生まれ。桑沢デザイン研究所、佐藤敬之輔タイポグラフィ研究所において文字設計を学ぶ。一九六九年ライトパブリシティ入社。東レ、キューピーマヨネーズなどのCMで注目を集める。一九七五年、浅葉克己デザイン室を設立。一九八七年、東京TDC(タイプディレクターズクラブ)を設立。東京TDC理事長、JAGDA会長、デザインアソシエーション会長、桑沢デザイン研究所所長。二〇一三年四月には旭日小綬章を受章し、同月第十二回佐藤敬之輔賞を受賞。

その時々の話題や関心事など身近なテーマで毎年開催している「情報デー/時の話題」講演会。今年は六月二十八日(金)、新潟市のホテルオークラ新潟で開催されました。講師には、桑沢デザイン研究所所長であり、東京TDC(タイプディレクターズクラブ) 理事長などを兼任する浅葉克己さんを迎え、「デザインは爆発だ」と題してお話を伺いました。浅葉さんは東レ、キューピーマヨネーズなど多くのCMが生まれた背景、現場の面白さなどを次々と披露してくれました。

広告は時代がつくるもの

新しい芽、新しい視点も出現

今日は世界に通じるデザインや、私が手掛けてきたCMなどについて話したいと思います。昔は広告だけ作っていれば良かったのですが、今はさまざまな国の言語があるため、言葉じゃなくても世界に通じるデザイン、タイポグラフィなどを考え、質、内容を高めていく必要が出てきました。そのためには、アートディレクション、グラフィックディレクション、コピーライティングという三本の矢がどうしても必要になります。

若い人たちは広告の仕事を頼まれたら、三本の矢を真っ先に考えてください。私もモノをつくるときには、三本の矢を考えながら、自分の得意としている武器を探り当て、未来のデザインの鉱脈を探り出しています。

ほかにも、私は一日一個の図形を考えることをしています。そうすると、一個できると十個ぐらいできるので、一年で三百六十五個の十倍で、三千六百五十個ぐらい考えることができます。これをずっと続けています。

現在、私が理事長を務める東京TDC(タイプディレクターズクラブ)は文字、言葉、視覚表現などを追求して、創立二十五周年になりました。日本人は一度設立すると、努力して継続する力がすごくあります。これは世界に類がないですね。

そして、一九九〇年より毎年、東京TDC賞を公募していますが、二〇一三年の応募総数は海外一〇〇九を含む三〇一五作品でした。ほかにも毎日広告デザイン賞や朝日広告賞などがありますが、若い世代からもすごい人が出てきたなと思いますし、いい広告があります。広告は時代が作るものだし、クリエーターも若い人が出現し、新しい芽、新しい視点が出てきていますね。

日本人は外国から入ってきたものにあこがれ、日本の伝統の中から新しいデザインを生み続けてきました。デザインは過去、現在、未来を見据え、自分にしかないもの、自分にしかできないものに挑戦することです。

私は伝統工芸に新しいグラフィックデザインをすると、世界で売れるものができるのではないかなと考えています。新潟にもそういう伝統工芸がありますよね。私が好きな火焔(かえん)土器です。あれはすごいですね。世界中があれは素晴らしいと考えていますから、少し今風のデザインにすると新しい作品ができると思います。

広告はコピーライターと組んでやる仕事です。僕がとてもラッキーだったのは、周りにいいコピーライターが多数いたことです。例えば、コピーライターの糸井重里さんと一緒につくった新聞の全十段の広告は、「脱がしてごらん、赤い靴」です。足のきれいなモデルさんを何十人もオーディションして、この一枚ができました。

長く広告をやっていて、中国ロケも良かったですね。「北京の空気は柔らかかった」。今では北京の空気は汚れきっているので言えませんが、このころはきれいで、太極拳の風景を使いました。次は人の多いところに行きました。これは桂林で、「夢街道」です。「真面目な話をしようじゃないか」というコピーは良いですよね。

文字デザインと卓球が大好き

新発田市でドリームマッチ開催

こういう大きな規模のロケのときは、十日間ぐらい、コピーライターとプロデューサーとアートディレクターとの三人で行きます。昼間は温度五十℃を超えるので、夕方からロバで移動しながらのシルクロードの旅です。その旅での一瞬を狙います。

南極ロケは何度か提案したのですが、一度も実現していなくて。イギリスの探検隊の女性が南極のペンギンを撮影していたので、その写真を買って、広告に使いました。これは良いと思う写真や資料などがあったら切り取って、持っていることです。このペンギンの写真もそうしいた一枚でした。自分の中にいっぱい引き出しを持っていると、やがてそれが役立ちます。

「おいしい生活。」です。「不思議、大好き」でエジプトに行った帰り、機内食がまずくて。「こんなときにお茶漬けが出てきたらいいな。そういうのがおいしい生活だよな」と話していて、それをメモしてありました。そのときのエピソードを使ってプレゼンテーションし、それが「おいしい生活。」になりました。

私は寄り道がすごく好きで、寄り道していると、いろいろ見えてきます。それをそのまま使って、「より道主義。」という作品にしました。ほかに大切にしているのはひらめきです。発想でひらめき、現場でひらめき、そのひらめきをデザインに生かします。

私の先生に佐藤敬之輔という人がいます。戦後、「英字デザイン」というものを作って大成功しました。その佐藤先生の影響で、私は文字に興味を持ち、文字デザインをし、東京TDCも設立しました。そして日常生活では、今も楷書も書き続けています。楷書を正確に書くと不思議なことに、スケッチというか、デッサンになります。デッサンと楷書は共通していますね。これは一つの謎ですけどね。二十年書き続けると分かってきます。

今、中国、台湾、香港などでは書とデザインを一緒にやろうという運動が起こっています。台湾の女性書家がいて、その人が作品をたくさん書いていて。本当は日本が中心となってやらなければという思いがあります。

話しは変わりますが、私は卓球が大好きで、あらゆる国に行って、卓球のチャンピオンと戦ってくるというのが常です。私の事務所は一階が仕事場ですが、余った空間を卓球場にしたこともあるくらいです。イスラエルに行ったときは、死海に入ってイスラエルの卓球チャンピオンと試合をしました。死海では浮かんで流れてしまうので、ひもで縛って行いました。このときに使った卓球台は私たちが宿泊したホテルに、そのときの写真と一緒に今も設置されているそうです。

東京TDCでは国内外の作家や関係団体などと情報交換や交流などの事業を行っていますが、九月には新発田市で「卓球ドリームマッチ」を開催しました。まさに私が大好きなものを融合させたイベントで、もちろん私も来ました。

では最後に、会場に十二個の卓球の球を打ちます。皆さん、これを私からのお土産として、ぜひお持ち帰りください。長時間ありがとうございました。